第2章 日本におけるアースデイの誕生

2.1 市民運動全国センター

本章ではまず、日本連絡所設立までの経緯を述べる。日本連絡所の連絡責任者であった須田春海氏は、1942年に生まれ、60年代の安保運動に若くして参加した。一連の運動を巡り、世の中を変えるには国家ではなく自治体を改革する運動が必要であると考え、東京都政調査会にて美濃部都知事(当時)の元で政策作りに関わる。後に美濃部氏が参院選に出馬する際、須田氏は、市民運動の為のセンターの設立を条件にサポートメンバーに加わった。1980年、須田氏他数名を中心として「市民運動全国センター」が設立されたが、諸々の理由により須田氏以外のメンバーは離散し、以来、現在に至るまで市民運動全国センターの「世話人」という形で、須田氏が名義上の代表を務めている。

市民運動全国センターの活動の主な目的は、市民運動を行う団体に対して、活動する際に必要な場所や印刷機器等の提供を行なうことであった。センターの設立以降、様々な市民団体がセンター内に籍を置き、団体の運営方法やノウハウを共に学び合い、センターを巣立っていった。日本連絡所や、その活動から派生した「環境自治体」「環境フォーラム」等の団体も、その一部である。

1989年、アースデイ・インターナショナルからの呼びかけを受け、日本におけるアースデイ開催を取り仕切る任を、市民運動全国センターが引き受けることになり、同年、須田春海氏を含めた数人により、センター内に「日本連絡所」が設立された。また須田氏は、個人がライフスタイルを変えるためには、それを支える社会の仕組みづくりが必要であると考え、日本連絡所結成以降、積極的に「環境自治体」作りに取り組んでいる。このような考えの下で、自治体へ働きかける際の窓口として、自治労との関わりを深めていた。

2.2 アースデイ日本連絡所

2.2.1 日本連絡所の設立趣意

須田氏は、日本における初のアースデイ開催に向け、まずは既存の社会団体である生協や労働組合、漁協や農協などに働きかけ、環境問題について考える場を設けることを提案し、環境問題についての理解の一般化を目指した。しかし、アースデイに関してこれらの団体と組織を結成することはせず、また全国のアースデイ運営に関しても巨大な組織化を禁止した(高橋ほか編 2000)。これはアースデイが、60年代─80年代に見られた中央集権的な社会運動としてではなく、より市民社会と一体化した草の根的な運動として、自由で多様な(高橋ほか編 2000)発展を遂げることを目指すという、須田氏の考えによるものであった。日本連絡所に関しても、「本部」や「代表」ではなく、「連絡所」という名称が敢えて選択されているのは、このような意図があったためである。

日本連絡所の活動目的は、それまで日本各地で各々に活動していた市民団体同士を繋ぐネットワークを形成することである(図1)。インターネットの無い時代においては、各団体は全国に“点”として存在している状態であり、それぞれが個々に活動を行っていたと言える。日本連絡所はそれらの団体を、アースデイを媒体として“線”として繋ぐことを目的とした。具体的な活動内容としては、各地から寄せられるアースデイに関する情報をニュースレターにまとめて定期的に全国へ送付し、アースデイ開催後には、各地の行動記録やアースデイ関連の報道資料をまとめた記録集を作成すること等である。

連絡所の活動に関しては、不文律の活動原則が存在した。具体的には、①日本連絡所が主体となって運動をしないこと、②日本連絡所からの情報発信を行なわないこと、③運営は原則としてボランティアが行なうこと、④イベント運営の際に(省庁からの)助成金を受け取らないこと、⑤外部へ寄稿等の依頼を行なう際には、ギャランティを発生させないことなどがその一部である。これらは不文律ではあったものの、連絡所に関わっていたスタッフの意識下に深く浸透しており、第I期の活動において一貫したこだわりとして現れた。このような日本連絡所の活動主旨については、連絡責任者であった須田氏の意向が強く反映されていたと思われる。

2.2.2 日本連絡所の活動内容

日本連絡所の運営財政は、連絡所が発行していたニュースレターである「アースデイニュース」読者からのカンパによって支えられていた。このような運営方法を可能にした理由は2点挙げられる。1点目は、事務所が市民運動全国センター内に設置されていたため、家賃がほぼ無料であったこと。2点目は、日本連絡所のスタッフが全員ボランティアで構成されていたこと1であり、これは、第I期の活動において非常に特徴的な点であると言える。90年代前半期においては、未だ「ボランティア」という単語が社会に浸透していない状態ではあったが、主に社会人を中心とした、10数名の核心的なボランティアスタッフが連絡所に関わっており、仕事帰りなどの空いた時間を利用して、ニュースレターやイベント運営などの活動を支えていた。

1990 年、第1回のアースデイには、国内で200箇所・1000以上のグループが参加し、日本において、地球環境をめぐる問題をイベント形式で訴えた、初めての事例となった(高橋ほか編 2000)。イベント開催に関しては初めての試みということもあり、連絡所から様々な団体へ対して、アースデイ開催の呼びかけが積極的に行われていたが、アースデイをこれほど全国的な動きとして拡大させた大きな理由の1つとして、NHKのラジオ放送が挙げられる。当時NHKラジオにて、約1週間に渡りアースデイの概要説明や参加の呼びかけが放送され、非常に大きな反響を得た。その後も、マスコミによる報道量に比例して、連絡所へのアースデイに関する問い合わせが増加していった。

日本連絡所は当初、アースデイのイベント運営については直接関わっておらず、実際にイベントを運営する「アースデイ実行委員会」とは完全に切り離して活動を行っていた。しかし、イベント運営に関わるスタッフが徐々に不足し、結果、90年代半ば頃からは、両団体がほぼ一体的に活動を行うことになった2。イベントの運営資金に関しては、協賛金という形で様々な団体から資金を募っており、特に90年代前半においては、イベント開催の約2ヶ月前から、生活クラブ生協と東京Eコープによって人員面の応援や資金援助が行なわれていた。第I期の初期から、これらの団体とは関わりが深かったと言える。

日本連絡所の活動における特徴的な点としては、他にも、「バルディーズ研究会」、「環境自治体」、「環境フォーラム」などの、日本連絡所から派生した団体の存在が挙げられる(表 1)。これらの団体の多くは、各地で何か問題が起こった際に、須田氏の呼びかけによって日本連絡所内に結成されたものであり、その後活動を発展させて日本連絡所から独立し、現在も活動を続けている団体もあれば、一時的な活動で終わった団体もある。これらの団体は、アンケート調査や勉強会による一般市民への働きかけや、市民を主体とした新たな政策の提案など、より具体的な環境問題への対策を実践しており、自ら主体的な活動を起こさないことを原則としていた日本連絡所の活動に対して、補完的な役割を担っていたと言える。

2.3 アースデイニュース

アースデイニュース(以下 EDN)とは、1990年から2000年まで、日本連絡所が発行していたニュースレターである。発行に関しては、あらゆる立場の人々が難なくニュースを受け取れるように、購読者に対して購読料を請求せず、ニュースを読んで日本連絡所の活動主旨に賛同した場合にのみ、同封した郵便振替用紙によりカンパを寄せてもらうという形を採っていた。ニュースは毎号、全国約3000の個人・団体へ送付され、また英訳版も発行されており、こちらは42カ国約250団体(斉藤・根岸編 1994)へ送られていた。EDN発行開始当初は、全国のアースデイに関する情報のみの掲載を目的としていたが、より恒常的な活動を目指し、92年以降は年間約10回のペースで発行されるようになった。

編集作業に関しては、須田氏を中心とした10名程度のボランティアスタッフによって行なわれていた。月に1回の編集会議において、各号の記事内容のテーマや方向性が決定され、各地で起こっている環境問題について読者から寄せられた情報を参考にしながら、よりこれから先に見据えていくべき問題を意識し、記事内容を決定していた。

EDNの主な掲載内容は、①須田氏による巻頭言、②様々な環境問題に関する基本情報、③環境問題に対する全国のアクション情報、④海外のアースデイ連絡所からの報告の和訳、⑤環境問題に関する著書の紹介・日本連絡所からのお知らせ(前回以降に寄せられたカンパ総額の報告)などである。全国のアクション情報については、92年4月号から掲載が開始され、以後2000年11月の最終号までほぼ毎号に渡り掲載された。92年以降、毎年約500件のアクション情報が寄せられており、(471件/93年、585件/95年、586件/98年)インターネットが発達していなかった時代においては、有用なネットワーク形成の手段となっていたと考えられる(図1)。


注釈
*1 日本連絡所では1992年から1995年まで有給スタッフを1名雇用していたが、それ以降はスタッフ全員がボランティアとなった。
*2 95年、正式に実行委員会への参加をEDNにて表明した。

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