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1997年5号〜サラリーマンが調べた石鹸と合成洗剤の真相について
 

サラリーマンが調べた石鹸と合成洗剤の真相について(夏休み自由研究)

 日頃、何気なく使う洗剤。洗う目的によって使い分けをしていることと思いますが、大きく分ければ、石鹸か合成洗剤かになるでしょう。

 合成洗剤の有毒性が世に問われて30年以上経ちます。石鹸の良さを見直そうと始まった主婦層を中心とした市民運動は、これまで身近な環境問題を考える上で、先導的な役割を果たしてきたことは言うまでもないことです。ところが最近になって、その石鹸が、水質調査する際の指標によっては、合成洗剤よりも高い値を示す、つまり環境に負荷を与えるとする記事が目に付くようになりました。

 石鹸か、合成洗剤か、いま一度問い正すため、調査してみました。

1.東京都消費生活総合センターの調査結果

 去る7/30付けの読売新聞でも公表された、同センターの調査結果によれば、「BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)、TOC(全有機体炭素量)ともに石鹸が多く、合成洗剤は少なかった。複合石鹸はその中間を示した。その一方、全窒素の負荷量は合成洗剤、複合石鹸が多く、石鹸が少なかった。全リンの負荷量はいずれの洗剤も非常に少なかった。」とあります。

2.日本生活協同組合連合会 環境事業推進室(室長 中野邦夫さん)の見解

Q1.合成洗剤、石けんとも扱っていると聞きますが、今後の販売計画とその根拠を教えて下さい。

A1.供給計画と根拠については、以下の通りです。

              合成洗剤(卜ン)  複合石けん(トン)   粉石けん(トン)
96年度供給実績       6,147        3,361        1,860
97年度供給計画       6,700        3,600        2,000
96/97前年比         109%        107%         108%

合成洗剤(卜ン):高アル系洗剤の使いやすさとコンパクトさ、価格競争力があり伸びる。

複合石けん(トン):石けんよりも使いやすく、価格競争力もある液体タイプが伸びる。

粉石けん(トン):洗剤学習会や販促用チラシなどで伸びる予定。

 全体の供給促進計画はどの洗剤をではなく、生協で洗剤を購入していただくことにおきます。

 今年久しぶりに洗剤(粉石けん・合洗・複合)についての、学習資料を「環境へ負担をどう減らすか」という視点で作成し、学習活動に入っています。汚れに合わせた洗濯の工夫やライフスタイルの見直しを訴えています。この結果「石けんでなければだめ」という論調ではなく、「着たら洗う」から、「汚れに合わせた洗濯へ」、さらに洗剤の適量使用と水の使いすぎに注意などを訴えていきます。

Q2.石けんの需要が落ちていると聞いていますが、詳しく教えて下さい。

A2.石けん需要の減少の背景

 粉石けんは1960年の5万卜ンをピークに若干の増減はあるものの減少してきました。これは粉石けんが誰にも使いやすいものになっていないからだと言えます。

 また最近は、石けん運動の広がりも弱く、粉石けんと合成洗剤の区別をしない層も出てきました。日本生協連でも粉石けんの改善(粒状化・溶けやすい脂肪酸の使用)に努めてきましたが、消費者にとっては決して使いやすいものとは言えず、使いこなす工夫と知恵が必要な洗剤の一つと考えています。例えば「溶けにくさ」「石けんカス」「匂い(洗い上がり)」「黄ばみ」は本来的には、石けんである以上、止むを得ないものですが、お湯を使って完全に溶かすとか、よくすすぐとか、黄ばんだら、「ハイドロサルファイトやシュウ酸などで漂白する」とかは、手間のかかることなのでしょう。またこれ以外にクレームになりやすいのは「全自動洗濯機の場合は特に洗濯槽に黒カビが発生する」ことです。これを経験した消費者は「やはり粉石けんはいやだ」となりやすいと言えます。日本生協連でも最大ピーク時には2,800トンあった粉石けんの供給量は、ここ5年間くらいは2,000トン前後です。

その他

(1)石けん運動が日本の消費者運動に果たしてきた役割は、環境問題について考えるきっかけになったという点では評価しますし、役割がなくなったとは決して考えていません。日本生協連としては、環境問題は総合的に考えていくべき問題と位置づけておりますし、生協も事業活動を営む以上、「環境マネジメントシステム」などの仕組みを導入することによって事業活動から生じる環境負荷を低減化していく必要があると考えています。そういう意味では石けんとか洗剤運動というジャンルでの運動から、消費者の暮らしの様々な面で生じる環境負荷を、総合的に低減化していくライフスタイルへの転換を呼びかけていくことが必要だと考えています。

(2)洗剤の環境負荷は、

  1. 環境影響の少ないもの(生分解性・環境中での濃度・水生生物への影響・有機物の量など)
  2. 環境に未分解物質が残らないもの
  3. エネルギ一や枯渇性資源の使用量の少ないもの
  4. 製品の包装についての配慮(詰め替え用・簡易軽量包装・再生原料使用・リサイクルのしやすさ)などを考慮した商品設計
  5. 消費者への科学的で正しい情報提供

が大切だと考えます。

(3)日本生協連としては、水環境への洗剤の影響を減らすためには、主要な合成洗剤の界面活性剤であるLAS(ライナーアルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ)の生分解性が石けんや高アルに比較して悪いこと、現在圧倒的に大量に生産され販売されている洗剤であり、水環境中での濃度を高め、水生生物に影響を与える恐れがあることなどから、より良い洗剤(石けんや高アル系洗剤や複合石けん)に切り替えることをすすめています。

3.きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国連絡会:佐々木勝也さん(全日本水道労働組合)、菅谷八重子さん(日本婦人会議)、田中輝子さん(埼玉連絡会)、日本消費者連盟:安部竜一郎さん(肩書略)の皆さんへのインタビュー結果

(1)石鹸のBOD(生物化学的酸素要求量)が高い点について:

 石鹸が合成洗剤よりBODが高いことは10年程前から知られています。これは石鹸が微生物により分解(生分解)され易い為です。問題は環境中に出た時にどういう影響を与えるかです。

 石鹸は1〜3日で生分解されますが、合成洗剤は生分解され難く、よく使われるLASでは30日後でも全ては分解されません(1)。

 下水処理場では、石鹸は完全に微生物により分解され、放流時のBODは合成洗剤使用時より著しく低下します。さらに下水処理場の微生物が増加し汚水処理能力が向上します(2)。

 洗剤が汚れを溶かす能力、界面活性の能力は魚への毒性があります。下水処理が無い場合などで洗剤が河川に出た時は、石鹸は薄まったり、河川の金属(カルシウム等)に出会って金属石鹸になると界面活性の能力が無くなりまが、合成洗剤は薄まっても界面活性の能力が無くならず分解もされ難いので毒性が持続します。このように、水質調査としてはBODだけでは不十分なのです。

(2)合成洗剤の有害性は:

 合成洗剤は1970年代からその有害性が問題となり、石鹸運動が始まりました。その後に合成洗剤に含まていたリンによる湖の富栄養化が注目を浴び、無リン洗剤が使われるようになりましが、これと同時に石鹸運動もやや下火になってしまいまた。しかし合成洗剤の有害性の問題は依然残っており、その後さらに強い有害性のものも登場しています。有害性には急性毒性、催奇形性、妊娠率低下、皮膚障害、アレルギー、発ガン補助作用(発ガンを助ける作用)、魚毒性等が報告されています(3)。

 厚生省による大学病院皮膚科での皮膚障害の原因調査では合成洗剤が第一位となっています。しかし厚生省では合成洗剤は適正使用量なら問題はないとしていて矛盾しています。消費者運動では洗剤の品質表示改正等を求めています。

 環境庁では水生生物に与える影響を調査中で、今年末の報告を注目しています。

 水道水に非イオン合成界面活性剤が混入する問題も発生しています(4)。非イオン界面活性剤は、発泡性が少なく使いやすい為に企業での使用量はトップとなっており、家庭でもコンパクト洗剤に使われて使用量が増えてきています。今まで主流だった陰イオン界面活性剤には水質基準がありますが、非イオン界面活性剤には水質基準が無く、水道の浄水場での除去も難しくなっています。水質基準の改正を求めています。

 また合成界面活性剤POEが分解されて出来るホルモン撹乱物質が新たな国際的環境問題として浮上しています(5)。ホルモン撹乱物質には生殖異常や発ガン性があり、経済協力開発機構(OECD)ではこの物質の管理システム(PRTR)導入を勧告し、環境庁では導入の検討を開始しました。

 このように合成洗剤は有害性が強いことが問題であり、石鹸の使用を勧めています。

(3)石鹸運動は曲がり角に来ているのか:

 非常に多種の合成洗剤が次々に開発されて問題が複雑となり、石鹸運動も分かり難くなってきています。また石鹸を使うのにやや慣れが必要なことや、合成洗剤は蛍光増白剤(有害なため食品関連や医薬品・化粧品への使用は禁止されている)の効果で白くなること、洗濯機が合成洗剤使用を前提に作られていること等もあって、石鹸の使用率が10%程度から伸び悩んでいます。BODに着目した報道の影響も出ています。今後石鹸運動をより分かり易くし、また勉強会等で理解を深めていきます。

<参考文献>

(1)「合成洗剤は地球を汚す」日本消費者連盟発行

(2)「洗剤が下水道処理に及ぼす影響について」(富士市下水道課)

(3)「洗剤の事典」(合同出版)

(4)「消費者リポート」第971号(1996)

(5)日本経済新聞 '97.6.17

4.まとめ

 これら取材を通じて得たことをまとめると、

  • 「石鹸と合成洗剤は一長一短」と即断することはできない。
  • 水質を評価する指標は、BOD、COD、TOC、窒素、リンだけでよいと言う訳ではなく、またこれらを同じ汚れの原因として同じ土俵で扱うのは無理がある。自然に還元するものとそうでないものとで峻別する必要がある。(自然界に還元するのに要するプロセスの長さと、難分解性を問うべき。)
  • リンの負荷量が減ったこと=環境にやさしい、とは断言しきれない。合成洗剤のリンが減ったこと=有毒性がなくなった、という訳ではない。
  • 石鹸の使い勝手を向上させることが、石鹸の購買を促すのには欠かせない。

 などが言えると思います。

 しかし、もともと洗うという生活行為自体が環境へ何らかの負荷を与えることには変わりありません。水や湯で洗えば済む場合もあるということ、汚れのひどいものは、拭き取ってゴミとして処分する方法もあるということ、洗剤を使わなくても汚れを落とせる手段(和布や洗濯石など)が他にもあること、などを考えてみたいものです。また、水を汚すという観点からすれば、洗剤以外にも気を付けなくてはいけないことは山ほどあります。

 合成洗剤よりも有害有毒なものを排水していないか、見直すことも欠かせないでしょう。

 末筆ながら、今回の取材でご協力頂いた皆さん、情報を提供して頂いた方々に感謝申し上げます。

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